海外不動産投資

【海外不動産】フィリピンで不動産投資をするなら最低限知りたい基本情報(1)

マカティ

こんにちは、ハスキー不動産です。現在都内で区分マンション1戸、地方の戸建て1戸を保有している初心者不動産投資家です。今後、地元埼玉での戸建て投資と、都内の区分マンション投資を拡大させていき、将来的には一棟アパートの購入、一棟アパートの開発とつなげていきたいと考えております。本業では海外不動産開発・投資を専門にしており、米国、豪州、東南アジアでの不動産投資の経験があります。

今回は、フィリピンの不動産マーケットの概要について勉強したいと思います。この記事では区分マンション投資ではなく、主に商業用不動産(オフィス等のビジネス目的で投資される不動産のこと)のマーケットについて勉強したいと思います。

この記事は、海外不動産投資に興味がある方と、仕事で東南アジア投資を専門にしているターゲットに紹介しています。この記事を読むと、フィリピン不動産マーケットを勉強する前提として、フィリピン特有の不動産事情等を勉強できます。また、フィリピンマーケットの将来性についても私の私見を紹介します。

この記事の結論::フィリピン不動産投資市場は、海外投資家にとって非常に厳しい状況が揃っているが、将来的には大きなマーケットになると思います!

実は本業で何度か、フィリピンでの不動産投資にチャレンジしたことがあるのですが、投資委員会を通過できず断念したことがあります。

保守的な投資会社だと結構リスク面を厳しくみられるので、一見するとリスクが高そうな市場に見えます。なぜ海外投資家にとって難しいマーケットなのかを詳しく解説します。

理由①財閥系企業が非常にパワフル

フィリピンは、日本の戦前のように財閥が非常に力を持っています。日本でも昔は、安田財閥や三菱財閥等が銀行や商社からあらゆる企業を傘下に収めるコングロマリットが経済を支配してきました。(日本でもまだその名残があると思いますが。)

フィリピンでは財閥が未だに力を持っていて、各財閥が不動産会社を傘下におき、そういった不動産会社が一等地を抑えていることが多いです。したがって大手財閥とタッグを組まないと、なかなか一等地で投資が行えないというのがフィリピン不動産投資の現状です。財閥については、改めて紹介する場を設けたいと思います。

東京では、確かに三菱地所や三井不動産といった大手不動産会社が一等地を抑えてはいますが、不動産の取引量が多いため、外資系企業でも参入するチャンスはフィリピンと比較すると多いと思います。

理由②外資規制があり、海外投資家が参入しづらい環境

フィリピンでは外国投資家は40%までしか不動産を保有できないという外資規制が存在します。アジアの国では結構残っていますが、これが結構曲者です。

投資をするにあたって、フィリピン企業に60%を握られてしまうので、結構フィリピン企業の好き勝手やられてしまいます。

JV Agreement(共同事業契約書)の中でかなり細かくMajor Decisionを明記する必要があるのですが、この交渉が結構骨が折れます。投資持ち分でメジャーをとれれば、良いのですが、それができないのはフィリピン投資の難しさの一つと言えるかもしれません。(詳細は弁護士の先生が出しているレポート等を見ていただければよろしいかと思います。)

理由③適正な取引利回りが判断しづらい

財閥の箇所で少し触れましたが、フィリピンのプライムエリアの不動産は大手財閥が抑えていて、ほとんど市場で取引されていません。

もしくは、取引はされていても大手財閥間で売買をしていて、表に出てきません。

そういった事情もあり、Cap Rateの適正水準を判定するのが難しいです。(Cap Rate = 物件価格/NOI(年間の純利益)です。)

通常、プロ投資家が投資をするにあたっては投資の通期でのキャッシュフローを計算してIRR(内部収益率)という数字で投資判断をすることが多いのですが(もちろん他の指標も見ます。)、一番大きく影響を与えるのは売却時Cap Rateです。

売却時Cap Rateは市場での利回りを参考にしながら、売却時点の投資家がどれくらいの水準で物件を購入するかを予測する必要があるのですが、参考にするものがないため、なかなか適正な水準を計算することができません。鑑定評価を出しても根拠が薄いので、正直なかなか信用できません。

投資の目線となるインデックスについても整備されていないため、どれくらいの利回りで購入すべきなのかは海外投資家を悩ませる要因の一つです。

理由④個人オーナーが都心の物件を手放さない

財閥以外にも、個人で都心の一等地に物件を保有している方もある程度いらっしゃいます。しかし、そういった方もなかなか売却してくれません。

フィリピンでは直近数年間に渡って不動産価格は右肩上がりで上昇しており、保有しておけば価格が上がるのは当たり前と思っているので、まだ上がるだろうから保有し続けようというインセンティブが働きます。

そうなると海外不動産投資家も困るのですが、都市の発展の妨げになってしまうのが問題です。フィリピンの首都マニラの中心地であるマカティというエリアがありますが(日本でいう東京駅周辺の丸の内・日本橋のような立ち位置でしょうか)、大通りから一歩入ると結構古い建物等が集積していて、ずっと開発されずにあります。

こういったエリアが開発されうると、街も活性化しますし、治安も良くなると思いますので、非常に悩ましい点です。(自分が保有していたら売却するかと言われると難しいのですが。)

フィリピン不動産投資市場の今後

では、フィリピンの不動産投資市場が悪いかと言われるとそんなことはありません。細かい不動産マーケットの分析は別の機会で勉強したいと思いますが、賃料も価格も右肩上がりで上昇を続けています。そして、明るいニュースもあります。

今まで、フィリピンにはREITが存在してなく、市場で取引することはできませんでした。実は2010年頃に法改正があり、REITを立ち上げる法制度は整っていたのですが、REITを立ち上げる主体である不動産会社からすると旨味が少なく、どの企業も及び腰でした。2019年に再度法改正があり、REITを立ち上げるメリットが生まれたことで、一気に急加速して今回のアヤラREIT誕生にこぎつけました。

今後は財閥系企業もREITを活用することで、外部から資金を調達してその資金を使い、新たな投資に振り向けるなどして成長のスピードを高める取り組みを始めると考えられます。そうすると、取引事例が増えて取引利回りの相場感が生まれてくることから、海外投資家も安心して取引を行えるようになります。

また、今までは現物不動産の共同取得もしくは、開発が一般的で、アグレッシブな投資家(デベロッパーや、投資ファンド)だけがフィリピン市場へと参画していましたが、今後は資産運用会社等が新興国投資の一環としてフィリピンREITへの投資などをスタートさせるものと考えられます。

ただ、すぐにそのような状況になるかというとなかなか難しいと思います。というのも、今回上場したAリートも、組入物件は3物件のみで、2番目のREIT上場を目指している会社もダブルドラゴンのみということで、取引事例の積み上がりもまだ難しいのではないかと思います。

ただ、私が知る中でもシンガポールの投資家がフィリピンで物件を買いたいが、財閥が物件を囲っていてなかなか取引できない、という話をよく耳にしており、マーケットが開かれることを期待している投資家は多いと思えます。

結論:①財閥系企業が非常にパワフル、②外資規制があり、プロ海外投資家が参入しづらい環境、③不動産投資市場で取引される売買事例が少なく、適正な取引利回りが判定しづらい、④個人で保有しているオーナーが都心の物件を手放さないといった難しさはあるものの、REITの拡大等により、商業不動産投資が活性化され、それが不動産市場全体に広がっていくのではないか、と考えております。

引き続き、フィリピン不動産投資について勉強していきます。

最後に、不動産投資は元本毀損リスクがありますので、自己責任でお願いいたします。それでは、ハスキー不動産でした。